私たちが教室運営の柱と考える、3つの”C”を紹介します。
・Curiosity(好奇心)
・Conscience(良心)
・Confidence(自信)
これらは医師としてのright stuff(正しい資質)であり、それゆえに私たちの講座における研究・教育・臨床の柱としております。
以下、研究・教育・臨床に関する、私たちのポリシーをお示し致します。
1. Curiosityの刺激に配慮した研究
積極的な学会発表・論文作成に関するモチベーションの維持・向上のため、curiosity(好奇心)の刺激に配慮した展開を志向します。
具体案は以下の通りです。
(1)基礎講座・他施設との積極的な学術的交流:腎臓内科と基礎講座・他施設との小勉強会や共同研究の推進、さらに外部研究者の招聘講演開催などを積極的に行い、グループ全体の知的刺激を促します。
(2)CKD有病者コホートの構築:そこから得られる知見が直ちに日常臨床にフィードバック可能なCKD有病者コホートを、市原市保健所ほかお力添えをいただける各医療機関との協力のもと構築します。
(3)臨床研究の充実:「最新の標準 (The newest standard)」たる、国内最高レベルの臨床体制を確立する事を通じて、透析関連を含む腎臓病一般の臨床研究を充実させます。その中から、将来的には新規診療技術の開発も可能となると考えます。
2. Conscienceの育成に配慮した教育
従来型の“常に与えられる”画一的・網羅的な教育から個別的・示唆的な教育へのシフトを心掛け、「何を教えるか」より「いかに学ばせるか」を重要視していきます。また、個別的で示唆的な教育への変革は、教育担当者の負担軽減にも繋がり、その点でもメリットがあります。このような“常に考え続ける”教育システムの確立を通じ、conscience(良心)の育成に配慮した展開を志向します。
具体的には、学部生には臨床や研究の最前線に触れていただき、大学院生には他施設の研究現場に触れさていただき、そしてスタッフには他施設での診療を積極的に経験していただき、誰もが少しだけ背伸びした、そして自発的な目標を持てるような教育の在り方を整備していく所存です。
さらに、教室においては自由な発想をスタッフ間で共有し、若手からもベテランからも等しく意見が出るような「良心的な」教室の在り方を提案していきます。スタッフの誰もがブレイン・ストーミングの形で意見を発することが出来れば、若手の貴重なアイデアを(ベテランの貴重なclinical pearl同様)拾い出すことが出来ます。このような“風通しの良い”教室のあり方は、リスクマネジメントとしてのレジリエンス向上、そして倫理面におけるコンプライアンス推進にも有効と考えます。
3.Confidenceの育成に配慮した臨床
帝京大学ちば総合医療センターにおける腎臓内科領域の診療スタイルを確立し、かつ発展させる手段として、根拠に裏打ちされたconfidence(自信)の養成に配慮した展開を志向します。そして当講座を、輸液管理や腎炎管理だけでなく、透析療法を含むあらゆる腎領域診療に対応しうる講座に育てます。
具体案は以下の通りです。
(1)腎臓内科マニュアルの作成:診療業務を標準化する事により、集団全体の臨床レベルを向上させます。マニュアルの作成過程において、非言語的に伝承されてきた臨床業務は客観化され、各自の臨床的叡智(clinical pearl)を拾い上げ共有財産にする事が可能となります。さらにマニュアルは定期的(1~2年に1回)に見直しを行い、臨床能力のアップデートを図ります。
(2)手技シミュレーション:医局員への教育プログラムの中に、腎生検、血管アクセス・腹膜アクセスの造設、各種トラブルシューティングに対する手技シミュレーショントレーニングを取り入れます。手技シミュレーションの導入は、各種インターベンションの習得において極めて有用です。このような実技教育を通じて、どのようなシチュエーションであっても腎臓内科医として行うべき事を行う事が出来る――”One man-army”となりうる――付加価値の高い人材を育てます。
(3)他施設との交流:国内外の他施設、とりわけ臨床に確かな実績を残している施設の診察手順を体験することは、自分の施設のレベルアップにつながります。また他施設の専門医を招き回診を行ってもらうことも、やはりレベルアップにつながります。そこで、腎臓内科領域の実臨床において高い評価を得ている施設への短期的派遣や、逆に他施設の専門医の短期招聘といった交流を、臨床レベル向上の手段として進めていきたいと考えます。
(4)腎移植・腹膜透析の促進:2017年末における千葉県の透析患者数は15,382人で、その98.3%(15,117人)は血液透析患者です。ところが血液透析患者の社会復帰率はきわめて低く、種々の調査によりますと、就労希望男性の実際の就労率は30~50%にすぎません。従って、維持透析患者の自立性の向上は急務と考えられます。そこで維持透析患者における自立性維持の手段として、腎移植および腹膜透析を促進し、目に見える形での患者・社会貢献を図ります。また腹膜透析は高齢者に対する“脳や心臓にやさしい”腎代替療法として社会的にも推進が期待されており、そのような観点でも拡大を図りたいと考えます。
(5)各種血液浄化への対応力の充実:血漿交換、DFPP、顆粒球・リンパ球吸着療法といった各種血液浄化への対応力を充実させ他科往診機能を発揮させることによって、集中治療部門を補完する形で、診療科をまたがった管理を必要とする症例への積極的な関与をはかる所存です。